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    アーカイブ メディア展望 2022年4月号 井坂 公明
    書評 石戸諭著「ニュースの未来」(光文社新書=860円+税)
     新聞・マスメディア産業の衰退が語られて久しい。2021年10月現在の日本新聞協会加盟113紙の新聞総発行部数は3302万部と4年連続で前年比200万部超の減少となり、この5年間で1千万部が失われた。中心的な読者層である団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる「2025年の崖」も目前に迫り、明るい話題はあまり見当たらない。
     しかし、本書は新聞産業論ではなく、記者、ライターが制作するニュースそのものに焦点を絞ったニュース論だ。ニュースとその作り手であるライターの未来に光を当てている。新聞などマスメディアを産業論の側面からだけ論じる時期は過ぎつつあり、「良いニュース」を作るにはどうしたらよいか、個々のライターがキャリアをどう描いていくべきかを議論する時期に来ているのだと思う。
     オールドメディアである毎日新聞から最先端のインターネットメディア、バズフィードジャパンの立ち上げに加わり、現在は独立してノンフィクションライターとして活躍している著者は、自らの経験の中で、メディアが変わってもニュースの世界では変わらない「基本」があると気づく。ニュースはどこよりも早く書く「速報」、視点や切り口を変えた「分析」、事象を深掘りする「物語」の三つの基本型に分類できるが、人間や人間に付随する物語を描きたいというのが著者の基本スタンスだ。
    「良いニュース」とは、「事実に基づき、社会的なイシュー(論点、争点)について、読んだ人に新しい気づきを与え、かつ読まれるもの」であり、それは「謎」「驚き」「批評」「個性」「思考」の五つの要素を満たすと強調する。
     ニュースとは通常どこのメディアにもまだ載っていない事柄を言うが、著者は「新しい」の意味がネットの登場により変わってきたとの重要な指摘をしている。バズフィードで配信した自分の記事が1年後にツイッターユーザーのシェアをきっかけに多くの読者に新たに読まれたという事例から、読者は1年前の記事だから「新しくない」と考えたのではなく、自身が知らなかったこと、それまでになかった視点があれば「新しい」ものとして読んでくれることに思い至ったのだ。
     毎日新聞でニュースと取材の基本を学びながらも、新聞記事の定型的な文体に縛られることの不自由さを実感。そして自由な文体を求めてネットの世界に飛び込み「ニュースの実験」にのめり込んだのだが、別の壁に突き当たる。それはページビューを増やすため記事の本数を多く出すよう求められるネットニュース業界の構造であり、新聞とあまり変わらない「古い競争」だった。本書は、著者の体験に裏付けられた興味深いメディア論ともなっている。
     マスメディアが衰退していったとしても、読者のニーズがある限り、ニュースが求められなくなる時代などない、ニュースの未来は魅力的で可能性に満ちている、というのが本書の結論であり、それは的を射ている。ただ著者も認めるように、ネットを含めたニュース空間の屋台骨を支えている新聞社が衰退し、代替する存在が現れていないとすれば、ライターの生活を維持するためのお金、いわゆる一次取材費は今後どこから回って来るのか。ニュースの発信者は必要とされ続けるが、一次取材費を正面から負担する新しいメディア群が現れてこなければ、書き手が生活を確保するのは現在より容易ではなくなっていくのではないか。



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