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アーカイブ サンデー毎日 倉重篤郎のニュース最前線 2025/04/06 倉重 篤郎
石破茂政権の命運 政権後見人・山崎拓が徹底分析 リベラルに徹し米中仲介外交で存在感示せ
石破茂政権が窮地に陥っている。商品券配布問題が直接の契機だが、本質的には、石破政治の方向性が見えず、世論の支持を失いつつあることも大きい。政権投げ出しに至るのか、局面転換はあり得るのか。山崎拓、亀井静香、平野貞夫の3重鎮が解読する。
石破茂少数与党政権がピンチだ。少なくとも以下3点での懊悩(おうのう)がある。
一つは、石破氏本人による商品券贈答問題だ。前号では、退陣政局にはならないが、説明責任を尽くすべきだと申し上げた。というのも、この問題には大きな落とし穴があるからだ。石破氏は1年生議員15人への各10万円の商品券計150万円は、自らのポケットマネー(私費)だった、と釈明した。だが、その後、長年の慣行だったとの証言が相次ぎ、原資が官房機密費(公費=税金)だったとの合理的疑いが生じている。これに丁寧に答えるのか黙殺するのか。政治とカネの規制の網が官房機密費にまで及んでいく可能性がある。
二つに、トランプ政権下での日米関係である。2月の首脳会談は何とかしのいだが、その後米政権要人から、防衛費のGDP比3%論や、在日米軍再編経費の削減といった無理難題や約束違反とも言うべき圧力がかかっている。双方に陸海空軍を束ねる司令部を設ける構想も、日本側が統合作戦司令部を発足させたものの、米国側はトランプ行革旋風の煽(あお)りで目途(めど)を立てられない。トランプ2・0によるウクライナ、ガザ戦争対応、NATO、同盟国軽視路線、自動車への25%関税といった新展開も、これまでの従米一本足打法では対処できまい。日米地位協定改定を1つの目標とする政権として、どう立ち位置を定めるか。難しい局面だ。
三つに急速な支持率低下だ。3月の主要6社調査結果を掲げると(対前月)、日経新聞が支持35%←40%、不支持59%←52%▽NHKが支持36%←44%、不支持45%←35%▽読売新聞が支持31%←39%、不支持58%←43%▽朝日新聞が26%←40%、不支持59%←44%▽共同通信が27・6%←39・6%、不支持57・8%←41・8%▽毎日新聞が支持23%←30%、不支持64%←54%となっている。支持率の平均下落率が9ポイント、不支持率の平均上昇率が10・5ポイント、もともと国民からの人気が身上であった石破氏だけに相当なダメージだ。
国会は予算が成立し、後半戦がスタートする。選択的夫婦別姓化法案をどうするか。会期末に向け内閣不信任案の扱いがどうなるか。来たるべき参院選は政権にとってどういう意味を持つのか。その際野党共闘はどうなるのか。カギを握るのはどの政党になるのか。参院選後、政権の命運はどうなるのか。石破政権起(た)ち上げの中心人物の一人であり、その後も政権を陰に陽に支えてきた山崎拓元自民党副総裁に聞く。
「慣習的なものだから、まさか問題になると思ってなかったでしょう」
「やめてもよかったのだろうが、歴代やっているから、それではとなったんでしょう」
「証明のしようがない。過去に官房機密費については、何一つ解明されたことがない」
「(官房機密費を)管理しているのは林芳正官房長官だ。これは自分が出したんだ、と言うことがあるか、ということだ。詮索してもほとんど意味がない」
「密接不可分だ。石破氏は昨年の総裁選で林氏に恩義がある。決選投票の際は最終的には岸田文雄氏が決断したが、林氏も宏池会を石破氏にまとめた。宏池会はもう林派だ。だから官房長官に就いてもらった。林、石破両氏の中に入ったのは古賀誠氏だ」
「そういう推量はあるが、推量でしかない。本人がポケットマネーと言っているんだから信じるしかない」
「例年この時期には国政補欠選挙がある。岸田文雄政権は2024年4月の衆院3補選で全敗(島根1区で敗北、東京15区、長崎3区は不戦敗)、これが躓(つまず)きの元だった(8月に退陣表明)。(石破政権も)今補欠選挙があったら惨敗だが、幸か不幸か、今春は一つもない。これが大きい。その意味では恵まれている」
「上がるでしょう。これまでの経緯は、森山裕幹事長がよく支えているということだろう。もっとも、昨年10月の衆院解散・総選挙は急ぎすぎた嫌いがあった」
自民191議席←247、公明24議席←32と惨敗だ。本来どうすべきだった?
「やはり所信表明や代表質問など一通りの手続きを踏み、石破氏らしさをアピールして解散した方が良かった。2000万円(の党支部支給)問題もあった」
それでも石破氏が首相指名された。基礎票だと、自公215に対し、立憲148、国民民主28、維新38計214とほぼ互角、ミニ政党の票を加えると野田佳彦(立憲民主党代表)氏を首相とした野党連立政権誕生の可能性は十分あった。
「それこそ玉木雄一郎国民民主党代表の政治判断が大きかった。つまり、…
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