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アーカイブ サンデー毎日 倉重篤郎のニュース最前線 2025/07/23 重 篤郎
倉重篤郎のニュース最前線 「日本人ファースト」を克服し新たな国際協調を 細川護熙元首相が時空を超える箴言
参院選を控えて、内憂外患の感のある現代日本。混迷政局に経済沈滞、そして国民生活の逼迫。海外に目を向ければ戦争が深刻化し、トランプ大統領からは様々な要求が。「全体知」をもって時代の全景に実践的に対峙してきた寺島実郎日本総合研究所会長が、最新世界を解読する。
排外主義を掲げる勢力に撹乱された参院選だったが、この政治混乱からいかにヴィジョンある社会を取り戻すべきか。かつて自民党1党独裁を終わらせた細川護熙元首相が、政権交代の作法、ナショナリズムを乗り越える世界認識、そして、それをなし遂げるリーダーの条件を熱く語る。
骨太の長期的視点が欲しい。誰に聞くか。やはり細川護熙元首相であろう。
関ケ原の戦いで活躍した戦国武将細川忠興の直系子孫で、旧熊本藩細川家第18代当主である。五摂家筆頭近衛家の第30代当主で昭和初期に首相を務めた近衛文麿の孫でもある。その血筋として、関ケ原からの数百年、摂家発祥の平安時代からの1000年単位の歴史を負う家柄である。好むと好まざるに関わらず、長いスパンでの視座が生業(なりわい)となる。
小学生の頃から父親に古典や漢籍を叩(たた)き込まれた。『古今和歌集』『万葉集』の素読、『論語』や『十八史略』の暗唱を求められた。学校の勉強をよそに、講談本、歴史小説、伝記物を読み耽(ふけ)った。吉川英治の『三国志』、大佛次郎の『鞍馬天狗』に始まり、カヴール、ビスマルク、ディズレーリ、チャーチル、ドゴールや源頼朝、足利尊氏、織田信長、豊臣秀吉ら内外の政治指導者の本を片っ端から読む青春時代だった。
高校時代に読んだナポレオンが特に印象的だった。1798年、3万5000の軍を率いてエジプト遠征した時のことである。暑さと疲弊で士気が落ちる中、ピラミッドに差し掛かった。そこでナポレオンは全軍に向かって「諸君、ピラミッドの頂から4000年の歴史が君らを見下ろしている」と演説、その言葉に鼓舞された仏軍は勝利をおさめカイロに入城する、という逸話だ。歴史における決定的一瞬を掴めるかどうか、これが政治指導者にとって決定的に重要だと感じたという。
父親に反対、勘当されながらも政治家を志し、いくつかの歴史の決定的場面を掴み、正対してきた。地方分権時代に熊本県知事を2期8年務め、ポスト冷戦で日本新党を起(た)ち上げ、55年体制崩壊の機に首相の座を手にし、戦後初の本格的政権交代、選挙制度改革、コメ開放という難事を次々に成し遂げた。その使命が終わると8カ月であっさり権力の座を降り、余生は陶芸、書と絵の世界に耽溺(たんでき)、それぞれに一家をなす。見事な処世ではなかろうか。
その人に今の日本と世界はどう映るのか。東京・北品川のアトリエを訪ねた。
「日本に元気がないといいますね。確かにそうだ。経済は活力を、政治は改革力を失っている。その一番の原因は何か、というと、政権交代がないことだと思う。政権交代がないと世の中は変わらない。政権交代により政治的課題のみならず、あらゆるものが変わっていく、と私は思います」
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