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    アーカイブ サンデー毎日 倉重篤郎のニュース最前線 2025/11/02 重 篤郎
    倉重篤郎のニュース最前線 高市首相、困難な船出 3つの理由 山添拓、舛添要一、山崎拓が喝破
     高市政権の船出は、異例の高支持率や市場の活況に迎えられ、順風満帆に見える。だが果たしてそうか。内政に目を向けると難題が山積、連立相手の維新との関係も極めて微妙である。山添拓、舛添要一、山崎拓3氏がそれぞれの目で揺れる政局を見据える。
     高市早苗新政権が船出した。明治以降104代目にして初の女性首相への期待感もあるのだろう。共同通信社の世論調査(10月21、22両日実施)では、高市政権の内閣支持率は64・4%で、発足時では石破茂政権の50・7%、岸田文雄政権の55・7%を上回った。その「積極財政論」を見据えた市場の「高市トレード」も花を添え、週明け20日の東京株式市場は全面高で日経平均は前週末から3・37%上昇、史上最高値の4万9185円50銭をつけた。5万円台は時間の問題となっている。
     当面は外交日程満載だ。26日からマレーシアで開かれる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議、27~29日には米国のトランプ大統領が来日、その後もすぐ韓国でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で訪韓、李在明(イ・ジェミョン)大統領との会談が予定されている。国際舞台へのデビューは、その一挙手一投足が報じられ、高市ブームを盛り上げることになろう。
     だがしかし、である。その後は厳しい内政が待ち受けている。物価高対策、格差是正、補正予算、政治とカネ、国会答弁、連立を組んだ維新との約束も果たさなければならない。高市丸がこの荒波を順風満帆に安定操舵(そうだ)できるのか。日本国民を乗せて、約束通りの平和と繁栄の航行に導けるのか。三つの懸念がある。
     第一に船の積み荷の問題である。過積載で航行不能、沈没ということはないのか。船出にあたって維新との間で駆け込み的に取りまとめた12分野、数十項目に及ぶ政策合意である。臨時国会で衆院議員定数1割削減を目指す、など短期間ではとてもできそうもない無理筋、あるいは、スパイ防止関連法制定や皇位継承を男系男子にするための皇室典範改正といった復古・アナクロ策が散見される。
     しかも、維新はこれらの課題を高市自民に押し付けたまま、いわゆる閣外協力で政権からは一歩引いている。首相指名選挙では高市首班に票を投じたが、閣僚は出さず、国会での答弁責任を負わないポジションを選択した。憲法66条は「内閣は行政権の行使について国会に対し連帯して責任を負う」としているが、維新の立ち位置はどうみても連帯責任を回避、いつでも連立離脱カードを出せるようにしているとしか見えない。荷の中身と荷主のこの態度をどうみるべきか。
     共産党政策委員長・山添拓氏に徹底解析を願う。
     第二に、船の動力である。逃げ腰の維新は別として、本体の自民党はどうか。これまたかつてのパワーを欠いている。人が足りない。新内閣を発足するにあたり、副大臣26人、政務官28人のうち裏金問題で政治資金収支報告書への不記載があった旧安倍派の7人が起用された。萩生田光一幹事長代行人事で懲り、ここは意地でも内閣へは裏金議員を一人も入れない、という選択肢があったはずだが、人繰りができなかった。
     そもそも四半世紀連立を組んできた政局の安定要因・公明党に逃げられる、ということ自体に政権政党としての往年の統治能力の衰えが見られる。もはや自民党は「ワンパーティー・ドミナンス」(1党優位制)を失いつつあるのではないかとの疑問も芽生える。
     比較政治学でこの問題を研究してきた舛添要一氏(元厚労相・元都知事)に解説していただく。
     第三に、船の操舵能力である。一見多数に見えて、常に小数与党化のリスクを抱えているこの高市丸の政局操舵の難しさは尋常ではない。高市キャプテンとそれを支えるチームがうまくこなしていけるかどうか。
     その最大の武器は解散権であろう。高市ご祝儀相場のピークで衆院選を構えれば、場合によっては自民単独での過半数回復も夢ではない、という野心がちらつく一方、公明党との選挙協力が得られない場合は、自民は小選挙区議席のうち2?4割を減らす、との試算(産経新聞)もある。朝日新聞はその結果、自民と立憲民主党の議席が伯仲するとのシミュレーション結果を公表した。政権維持への飽くなき執念と冷酷なデータとの間でどう判断を下すか。
     ここは政局の達人・山崎拓氏(元自民党副総裁)の見解を聞きたい。
    医療費削減がもたらす国民負担増
     まずは山添拓氏だ。定数削減が急に出てきた。
    「自民党が高市氏を選んだのは、少数与党に転落し、極右排外主義的な政党が伸びるなか、活路を見いだし右旋回したもの。維新も躍進したわけではなく、自らの保身と自民党の延命を手助けするために擦り寄った。私たちは補完勢力と呼び、維新自身が『第2自民党』と名乗ってきたが、もともと政策的一致があり、ハードルのない2党だった。公明党が連立を離脱して空白になった間隙(かんげき)を埋めるように接近し、この際目立つ成果をと持ち込んだのが議員定数削減だ」
    「裏金事件を契機に政治とカネ問題で焦点となってきたのは企業・団体献金の禁止であり、維新は法案も出して求めてきたのに、いきなり『政治改革の一丁目一番地は議員定数削減』と言うのは、すり替えだ。昨年の衆院選では『自民党の政治とカネの向き合い方、一緒にやっていくのは不可能だ』と言っていたわけだから、有権者に対する裏切りでもある」
    「選挙制度の問題は民主主義の土台に関わる。国会のルールとして、すべての党が意見表明する場での徹底した議論と合意でやっていこうとしてきたにもかかわらず、2党の合意で進めようというのはあまりにも強引だ。衆院では、議長のもとに『衆議院選挙制度に関する協議会』が設置され(2024年12月)、すでに8回開催、そこでは選挙制度は比例代表を中心にすべきだとか、このままではどんどん地方の声が届かない国会になるのではないかと議論されてきたのに、それらをすべて無視して、この間ほとんど議論になってない定数削減を持ち出し、1割削減という乱暴な案を出してきた。論点すり替え、裏切り、乱暴と三重の悪筋案件だ」
     世の中受けはする?
    「確かにその面はある。国民民主や立憲にも賛成の声が出ているし、有権者の立場から議員定数は減らしてしかるべしという意見もあると思う。ただ、削られるのは民意の方であり、あなたの声だ。そこを率直に言いたい。特に比例代表が標的にされているが、死票が少なく小選挙区より民意を正確に反映する比例代表を削れば、自民や維新が議席の占有率を高めていく。余計な声が届かない国会にしようということでないか」
    「そもそも日本の国会議員数は、決して多くない。…



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