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アーカイブ フェロー・早田 秀人 エッセイ「思索の散歩道」 2025/09/15
日経BP社の調査によると、「創業から100年以上を経過した企業の数で、100年企業が世界で最も多かったのは日本で3万7085社。世界の創業100年以上の企業総数、7万4037社に占める比率は50.1%となった(2022年8~9月時点)。2位は米国の2万1822社(29.5%)、3位にドイツの5290社(7.1%)が続いた。創業200年以上までさかのぼっても1位は日本の1388社。世界の200年企業2129社の中での比率は65.2%となった。2位は米国の265社(12.4%)、3位はドイツの223社(10.5%)、4位は英国の81社(3.8%)となった」とあります。
モノ作りは、ハードとソフトを含めたサイエンス、エンジニアリング、とテクノロジーが織りなす人間の英知、すなわち、経営学の泰斗として著名な故野中郁次郎さんが提唱された形式知と暗黙知が結集されたアートと云えるでしょう。
日本人は、〝匠の技〟と言われる職人の鍛え抜かれた技に裏打ちされたモノ作りに一日の長がありますが、〝匠の技〟は職人が個人単位で完結させますので、修業と伝承の世界感に閉じ込められてしまうきらいがあります。現代の商品生産は技術・技能を職人の個人単位から解き放ち、マニュアル化やシステム化による形式知よってモノ作りをし、出来た製品は、デファクトスタンダードとして生産者独自の知的財産としてつないでゆくことが一般化されています。この面において、欧米型のモノ作りは一日の長があります。
日本が脈々として紡いできた独特の暗黙知によるモノ作り文化の問題は、ややもすれば昨今の 〝ガラパゴス化〟という表現に例えることが出来ます。〝ガラパゴス化〟の代表的な例は、作り手が才を尽くして盛り込んだ機能が、使い手には操作が複雑すぎてほとんど使われないといった〝ガラケー〟といわれる携帯電話があります。
この〝ガラケー〟は、インターネットの利用によるスタンダード機能の方向と乖離していたため、海外市場でまったく支持されませんでした。なぜ、日本のモノ作りはガラパゴス化しやすいのでしょうか?
一つ目は、1億2000万人の市場の規模を有する独自のマーケットがあること。自国内のマーケットを相手にすれば規模のビジネスを自己完結できる日本は、職人や生産者にとって恵まれた市場と言えるのでしょう。
二つ目は、ユーラシア大陸の東端にある地理的な特長です。歴史的に外敵から侵されることなく独自の文化を発達させ、守り受け継ぐのに、日本列島は有利な役割を果たしてきました。
三つ目は、日本語という世界的に特有な言語が無形の障壁となり、「海外から入りにくく、海外に出にくい」という、物心両面からなる日本独自の文化がつくられました。
日本が世界から閉ざされた方向へ向かいやすい傾向から脱して、〝日本のモノ作り〟による製品が世界市場で多く受いれられるために、世界の人々が何を欲しがっているのか、世界市場のトレンドがどこに向かおうとしているか、私たちはアンテナを広く張り、世界に冠たる”日本の術”の結晶たる高品質の単独製品をさらに進歩した形のシステム商品として世界標準化し、市場を開拓していくことが大切です。
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