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    アーカイブ 研究所長・井坂 公明 メディア 2025/12/28
    新聞総発行部数2486万部、6.6%減、落ち込み続く-新聞協会発表
    =描ききれない、「紙」に代わるビジネスモデル=
     日本新聞協会が12月23日に公表した2025年(10月現在)の加盟日刊104紙の総発行部数は、2486万8122部と、前年に比べ174万8456部、6.6%の大幅減となった。前年比の減少率は18年以降8年連続で5%を超えており、急速な落ち込みが続いている。25年も前年、前々年に続き購読料の引き上げが相次いだことや購読者の高齢化による解約の増加などが響いた。部数減が止まらない中、新聞各社はジャーナリズムを担う報道機関としての生き残りを懸けて悪戦苦闘しているが、いまだ「紙の新聞」に代わるビジネスモデルは描ききれていない。
    ◆前年比174万部減、減少率は高止まり
     新聞協会によると、25年の総発行部数は一般紙が2337万3706部(前年比6.3%減)、スポーツ紙は149万4416部(同10.9%減)。スポーツ紙は3年連続で減少率が10%を超えた。発行形態別にみると、朝夕刊セット(1部として計算)は337万5969部(同13.8%減)、朝刊単独部数が2114万5804部(同5.2%減)、夕刊単独部数は34万6349部(同14.0%減)だった。1世帯当たりの部数は前年の0.45からさらに下がって0.42となった。
     新聞発行部数はピーク時の1997年(5376万部)以降長期低落傾向が続いており、24年に半減となって以降も下げ止まる兆しはない。18年から23年までは前年比200万部を超えるマイナスが続いた。24年、25年は減少幅こそ200万部を下回ったものの、減少率はそれぞれ6.9%、6.6%と高止まりしたままだ。
    ◆夕刊休刊や購読料値上げ相次ぐ
     25年も各社の新聞発行体制の見直しが続いた。北陸中日新聞(中日新聞北陸本社発行)が3月末で夕刊を休刊したほか、毎日新聞は北海道の道東・道北地域と島根県の石見地方で、同月末で新聞の配達をやめた。朝日、毎日、産経(大坂)、東京の各紙はそれぞれ8月から土曜日の夕刊を休刊した。また、産経新聞は1月末で夕刊フジの発行をやめ、東京新聞も同月末で東京中日スポーツの紙面発行を休止した。このため、新聞協会の加盟日刊紙数は前年の106紙から2つ減って104紙となった。
     ウクライナ戦争や円安を要因とする新聞用紙代の高騰を受けて、23年春に始まった新聞購読料値上げの動きは、25年も止まらなかった。読売、北國両新聞が1月から値上げしたのに続き、富山、佐賀、荘内、高知、夕刊デイリー、南海日日、サンケイスポーツ、報知、日刊スポーツ、スポーツニッポン、陸奥、九州スポーツ、南日本、静岡の各紙が購読料を引き上げた。
    ◆読売45万部減、毎日は15.2%のマイナスに
     新聞協会が公表した数字は全体の発行部数だけなので、新聞ごとの増減は窺えない。そこで日本ABC協会がまとめた日刊紙の朝刊販売部数(25年10月現在)を見ると、全体では2205万部(千部以下切り捨て、以下同)で、前年同月に比べ148万部(6.3%)落ち込んだ。全国紙では読売新聞が530万部で45万部(7.8%)減、朝日新聞は318万部で15万部(4.6%)減、日経新聞は125万部で9万部(7.3%)減、毎日新聞は115万部で20万部(15.2%)減、産経新聞は79万部で4万部(5.3%)減。前年までと比べると、日経新聞と毎日新聞の順位が入れ替わった。部数では読売新聞、率では毎日新聞の減少が目立つ。
     全国紙5紙の合計は1169万部と、全体の53.0%を占めた。前年同月に比べ95万部(7.5%)のマイナスで、全体の減少分のうち64.0%が全国紙の減少分だった。全体に占める全国紙の割合は前年より0.7ポイント低下、一方、減少分の中での割合は3.7ポイント上昇した。部数減は地方紙より全国紙で深刻であることが分かる。ただ、地方紙も今後購読者の高齢化が進むにつれ、より厳しい経営環境に置かれる可能性が高い。
     紙の新聞に代わるビジネスモデルとして有力視されているのは、デジタル版(電子版)だ。不動産などで稼ぐ方法ももちろん有力だが、報道機関という立ち位置から考えても、ニュース関連の収入を主柱に据えるのが適切だろう。経済コンテンツが売りの日経電子版は有料会員が102万人(25年1月1日現在)に達し、数年以内には朝刊販売部数を上回り、紙に代わって主役の座に就く見通しだ。これに対し、朝日新聞デジタル版は30万8千人(25年9月末現在)にとどまっており、ここ数年横ばい状況が続いている。毎日新聞や産経新聞は有料会員数を公表していない。読売新聞は、デジタル版は紙の新聞に付帯するものとの位置付けから、独立した有料媒体とはしていない。
    ◆生成AIによる記事無断利用が死活問題に
     25年には、記事コンテンツの無断利用をめぐり、日本でも新聞社と生成AI(人工知能)企業が火花を散らした。まず読売新聞東京・大阪・西部3本社は8月7日、AIを使った検索サービスに記事を無断で利用され著作権を侵害されたとして、米新興生成AI企業パープレキシティを相手取り、記事の利用差し止めや、約21億6800億円の損害賠償などを求める訴訟を東京地裁に起こした。同26日には朝日新聞と日経新聞もパープレキシティに対し同様の理由でそれぞれ22億円の損害賠償などを求める共同提訴に踏み切った。
     12月1日には毎日新聞と産経新聞、共同通信がパープレキシティにそれぞれ抗議文を送付し、記事利用の即時停止などを求めた。共同通信に加盟する地方紙など48社も連名で抗議声明を発表。新聞協会は同23日、内閣府に対し知的財産権の保護が不十分だとして、さらなる法整備を求める意見書を提出した。
     記者が膨大な時間と労力を費やして取材・執筆した記事について、対価を支払わずに「タダ乗り」されるのを許せば、デジタル革命に乗り遅れて苦境に立たされている新聞社は、生き残りの道を閉ざされてしまう。20世紀末から21世紀初めにかけてのインターネット草創期に、新聞社はヤフーニュースなどのポータルサイトにタダ同然の低価格で記事を提供し、現在の衰退の一因を作ってしまった苦い経験があり、「第2の敗戦」は何としても避けたいところだ。
     米国では大手メディアによる訴訟が頻発する一方で、オープンAIなど生成AI企業の一部には、特定のメディアとライセンス契約を結び対価を支払う事例も出てきた。いずれにせよ、生成AIによる記事の利活用という新局面を迎え、新聞社にとって記事の「値決め」は死活問題となる。巨大な生成AI企業と対峙するに当たっては、日本の新聞業界全体で一致団結する必要があるだろう。(了)



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