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アーカイブ 主席研究員・櫻井 元 エッセイ 2025/08/18
パンデミックに向き合った日々――その記憶と記録(2)
収録を終えると、クルーズ船が見えた
2020年3月15日、横浜山下埠頭。『魔改造の夜』夜会の第1回の収録が行われた。スタッフで体調を崩している人間は皆無だったし、私たちは収録に熱中した。夜遅く、ほぼ収録を終えて埠頭に出た時、停泊中のダイヤモンド・プリンセス号の煌びやかな装飾ライトがとても良く見えた。ああ、こんなにあの大変なニュース源は近いんだと妙に感心。まさか、あれほどのことになっていくとは……。今思えば象徴的だ。
【プロデューサー 長澤 智美さん】
「テレビマンユニオンニュース」(2023年11月30日・No.659)より
「月イチレギュラー」と言われたり「不定期放送」と言われたりするNHKテレビの科学技術エンターテインメント番組『魔改造の夜』。最新(第18回)の放送は、8月8日夜の「シャボン玉ロープ――シャボン玉伸ばし走」だった。「K州大学」「O電気」「M菱電機」の技術者たちが、大きなシャボン玉をつくるロープを手づくりマシンに搭載、25㍍走らせて、シャボン玉の長さを競った。詳しくはNHKプラスの見逃し配信でご覧いただくとして、毎回、身近な玩具や家電、日用品を「魔改造」する技術力を競わせ、エンジニアのプライドと子どもっぽい「遊び心」をうまくブレンドした演出が光る。
この『魔改造の夜』の第1回(2020年8月22日・地上波放送)は、電池で動く犬のぬいぐるみを改造し、競走させるという趣向で、自動車メーカーの「T社」が優勝した。
収録場所は、横浜・山下埠頭に近い元倉庫か工場だったか、床のコンクリートのひび割れもそのままに、機材を搬入し、臨時のスタジオにしたのだろう。ちなみに、収録は今も同じ建物で続けられているように見える。古びた建物、暗めの照明が「夜会」の個性ともなっている。
ダイヤモンド・プリンセス号は2020年3月1日、全乗客・乗員を下ろし、番組収録のあった15日は、3日後に始まる除染作業を待っていた。
『魔改造の夜』の初回放送は評判となり、単発特番の予定から、続編制作へ、と方針が変わる。しかし、世の中は不要不急のイベント中止、リモートワーク推奨へと舵が切られて、大学はいずこもリモート授業、外来の取材禁止となっていて、とても玩具の改造作業など提案しに行ける状況ではなかった。
しかし、想定外の経緯で番組は軌道に乗る。第1回の優勝チーム「T社」が、同業の「H技研」に声をかけ、放送をみた同社の技術陣有志が乗り気になったのだ。最終的に3社の参加チームが揃い、第2回の夜会は10月に収録、11月に放送された。映画館やライブハウスが休業中なのに、番組収録ができたのは、他流試合で腕を試したい、というエンジニアらしい挑戦する心があったからだ、と長澤さんは感謝している。出場チームや出演者は、しばらくマスクやフェイスシールド着用が続いたが、番組は途切れなかった。
◇
「テレビマンユニオンニュース」(No.659)の特集は、「コロナ禍のテレビマンユニオン、汗と意地と悶々と……試行錯誤の記録。」のタイトルで、長澤さんら13人がコロナ禍と向き合った苦心の舞台裏を率直に記録している。
ちなみに、自宅に保存してある一番古い同社のニュースは、2005年6月30日の第582号。新聞協会の研究会にテレビマンユニオン会長だった重延浩さんに来ていただき、英国の放送制度などについて話を聴く機会があった後、送られてきた冊子だ。以来、制作者たちのアイデア、こだわりが詰まった社報から、多くを学んできた。
数日前に届いた最新の「テレビマンユニオンニュース」(No.664)に、チラシが同封されていた。『魔改造の夜――THE MUSEUM』の告知。「番組で登場した全モンスター集結!」とあり、ベルサール秋葉原で8月25日から9月2日まで展示会が開かれる。
すぐれた番組の企画は、コロナ禍の逆境を、たくましく生き延びた。
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