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    アーカイブ 月刊ニューメディア 2021年12月号 水野 泰志
    大臣のパフォーマンスか
     総務省若手の提案はどうなる
    【NM WATCH】 メディア激動研究所代表・水野泰志
     総務省で9月初め、「情報通信行政に対する若手からの提言~総務省2.0に向けたロードマップ~」と題する文書を、武田良太総務大臣(当時)に伴われた若手官僚が、記者会見で発表した。大臣の見解表明でもなければ、省として決定した政策発表でもない、いわば省内の研究報告に過ぎない内部文書だが、あえて大々的に公表した異例の事態を、いぶかしむ向きは少なくない。
    総務省「大事件」の汚名挽回?!
     まず思い浮かぶのは、東北新社やNTTなどによる底なしの違法接待問題や、「行政がゆがめられた」と断罪された外資規制違反問題の激震が収まらない総務省にあって、意気消沈する省内を元気づけようというカンフル剤的効果だろう。加えて、情報通信行政を担ってきた幹部が軒並み総務省を去っている中、意気軒高な若手が少なからず存在することを内外に示そうとの狙いもあるようだ。
     「大事件」の汚名返上のために、若手官僚が将来のビジョンを描こうとする意欲的な姿勢は大切にしたい。だが、武田総務大臣の声かけで始まったと言われるだけに、パフォーマンス的な色合いが濃く、政治的な思惑も透けて見えるようだ。
    「たこつぼ行政」延長上の発想
     若手改革提案チームは、省内の公募に応じた課室長級から係長級まで45人の有志職員が参加、7月から検討が始まり、短期集中で提言をとりまとめたという。
     その提言は「情報流通・横断」「技術・国際」「通信・電波」「放送」「郵政」「組織風土・働き方」の6ジャンルについて改革を訴えている。だが、一読すると、大半は抽象的な表現に終始し、具体性に欠けていることがわかる。まるで、やっつけ仕事の作文のようだ。問題になった利権構造への切り込みも甘いように見受けられる。
     何より問題なのは、ここに至っても、縦割り行政どころか、いわゆる「たこつぼ行政」と呼ばれる従来の延長線上の発想に縛られていることだ。通信も、放送も、各局がそれぞれの業界しかみていなかった反省が欠けているのではないだろうか。
     今、情報通信行政に求められているのは、部局を超えた総合的な施策の推進にほかならない。ネット社会が急速に進展する中、電波オークションも、ユニバーサルサービスも、技術実証も、部局ごとで考えるには限界があり、組織横断的に対応しないと、情報通信全体を俯瞰した大胆で有効な絵図面は描けそうにない。
    深刻な官僚の下請け化
     それなのに、「総務省2.0」と自称するのは、いささかおこがましい。総務省OBも、「若手官僚に面白いことを考える力が落ちている」と、ため息をつく。その原因の一つとして「永田町と霞ヶ関のパワーバランスが崩れ、官僚の裁量の余地がなくなって下請け化していること」を挙げる。
     総務省内の反応は鈍い。若手の旧自治官僚は「えっ、そんな提言があったの?」とまるで他人事で、総務省全体で提言が共有されているようには見えない。
     提言を受け取った武田総務大臣は、「提言をもとに、予算要求や制度改正を含め政策立案に反映できるよう指示した」と述べ、通信や放送の分野を横断した戦略検討チームと電波割り当て改革の推進室を設けたことを明らかにした。
     省内改革の必要性は言わずもがなで、前例のない提言が具体化するにこしたことはないが、大臣も代わり、「たこつぼ行政」の旧態依然とした体制の中で、「花火で終わらないでほしい」と願うのは、筆者ばかりではない・・・。



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