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    アーカイブ 月刊ニューメディア 2022年9月号 水野 泰志
    情報通信行政の立て直しは道半ば
      総務省事務次官は16年ぶりに(旧)総務庁出身
    Mizuno's EYE メディア激動研究所代表・水野泰志
     総務省の事務次官に6月末、山下哲夫総務審議官(1985年総理府入府)が就任した。旧総務庁出身者では、2006年の松田隆利氏以来、実に16年ぶり、3人目。旧総務庁組にとって、待ちに待った事務次官の誕生となった。もっとも、「総務省接待事件」による旧郵政省組の自壊や旧自治省組の台所事情で回りまわってきた「タナボタ」といえなくもない。旧郵政省組にしてみれば、いまだ事件の傷は癒えずに雌伏の時は続き、喫緊の課題が山積する情報通信行政の立て直しも道半ば、ということになる。
     「接待事件」の後遺症はある程度予想されていたが、今回の人事も異例続きで、キズの深さをあらためて見せつけた。
     事務次官を退任した旧自治省出身の黒田武一郎氏(82年入省、以下同)の後継として衆目が一致していた谷脇康彦総務審議官(84年郵政省)が「接待事件」で辞職したため、次は内藤尚志消防庁長官(84年自治省)が有力視されたが、結局、見送られた。人事に詳しい総務省OBによると、黒田氏が、旧郵政省組の不祥事にかこつけて旧自治省組が次官人事を独占したと受け止められることをきらったからだという。となれば、内藤氏は退官するところだが、山下次官と入省年次が逆転してまでも総務審議官として残す異例の措置となった。
     情報通信行政を担う旧郵政省組の布陣をみると、トップは、昨年、技官で初めて就任した竹内芳明総務審議官(85年)が続投。国際担当の総務審議官に二階級特進で抜擢された佐々木祐二氏(87年)は退官し、代わって吉田博史情報流通行政局長(87年)が昇格した。吉田氏は、接待事件で内閣広報官を辞職した山田真貴子元総務審議官(国際担当、89年)の夫でもある。
     実務を担当する三局のうち、総合通信基盤局は二宮清治局長(88年)がデジタル庁の統括官に転出、後任に竹村晃一官房総括審議官(89年)が就いた。一方、情報流通行政局長には、上がりポストとされている関東総合通信局長を務めていた小笠原陽一氏(88年入省)が戻ってきた。技官の田原康生国際戦略局長(88年入省)は残留した。
     幹部ポストを見渡すと、何となくぎこちなさが残り、次代の情報通信行政を背負って立ち、大所帯の総務省を率いるにふさわしい人材はなかなか見当たりそうにない。それもこれも、「接待事件」で有力幹部がごっそりと抜けてしまったため、年功序列の霞が関人事が崩壊してしまったからにほかならない。
     将来を嘱望されながら「接待事件」で処分された課長級の人材も、ほとんど本省を離れたまま。そんな中、もっとも軽い戒告処分を受けた豊嶋基暢氏(91年)が枢要ポストの電波部長として本省に復帰したことは、そろり一歩というところだろう。
     もっとも、「接待事件」のキーマンだった谷脇氏は、よりによって接待事件を起こしたNTT傘下のIIJの副社長に就任して復権。巷からみれば、行政と民間企業の親密ぶりを地で行っているように映る。
     情報通信行政は、ネット利用者の情報保護の具体化、ネットにおける誹謗中傷対策、ネット時代における放送の抜本的改革など、日々深化するネット社会の健全な発展に向けて早急かつ効果的な政策が求められている。強固なフォーメーションを組んでまい進したいところだが、立て直しには時間がかかりそうで、まだ道半ばと言わざるを得ない。



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