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    アーカイブ 月刊ニューメディア 2023年6月号 水野 泰志
    現実味帯びる「夕刊がなくなる日」
     東海エリアで毎日に続いて朝日も休刊
    Mizuno's EYE メディア激動研究所代表・水野泰志
     新聞の「夕刊がなくなる日」が現実味を帯びてきた。
     今春、東海エリアで毎日新聞に続いて朝日新聞が夕刊の発行を取り止めた。新聞用紙代の大幅値上げが引き金になったようだが、全国紙が三大都市圏の一角で夕刊を休刊せざるをえなくなった事態は、あらためて新聞の衰退を痛感させられる。夕刊休刊の大波は、遠からず東京エリアや大阪エリアにも波及することになろう。
     愛知・岐阜・三重3県をエリアとする毎日新聞中部本社は、3月31日付けを最後に、第二世界大戦による約7年半の中断をはさんで約80年にわたって発行してきた夕刊を休刊した。1935年11月25日付けの第1号には「名古屋で最初に印刷した夕刊!」の文字が躍る歴史のある夕刊だった。
     朝日新聞名古屋本社も4月5日、5月1日から夕刊を休刊する社告を紙面に掲載した。読売新聞はもともと朝刊しか出しておらず、日本経済新聞も8月にも休刊するといわれていて、東海エリアでは全国紙の夕刊がまったく読めなくなりそうだ。
     静岡県でも、地元有力紙の静岡新聞が3月末で夕刊の発行を取り止めた。名古屋を本拠とする中日新聞は「当面、休刊する予定はない」というものの、販売部数の落ち込みは大きく、先行きには不透明感が漂う。
     ネットの進展に伴い、だれでもニュースをリアルタイムで入手できるようになり、情報の発信が朝刊と夕刊の2度しかできない新聞の存在感は年々希薄になってきていたが、とくに夕刊への影響は大きかった。夕刊が配られるころには、夕刊に載っているニュースはほとんど既報になっているからだ。
     このため、00年に福島民報と福島民友が夕刊の廃止に踏み切ったのを皮切りに、休刊のうねりは全国に及んだ。中でも、08年のリーマンショックと20年のコロナ禍は大きな打撃となり、20紙近い地方紙が相次いで休刊した。
     こうした中、製紙各社が、ウクライナ戦争をきっかけにした資源価格の高騰を理由に、新聞用紙代の値上げを、22年秋に続いて、23年度納入分についても「通告」。合わせて3割程度というかつてない規模の値上げを迫っている。製紙会社にとって、新聞用紙は特殊な用途であるため汎用性がなく、かねてから採算性が指摘されてきた。それでも、生産を続けてきたのは社会的使命感によるところが大きいといわれる。だが、もはや背に腹は代えられなくなったのが実情のようだ。
     新聞各社の財務状況は厳しく、年々売り上げが落ちていく中、用紙代の値上げ分を吸収するのは容易ではない。近年の夕刊全体の総発行部数は激減しており、製作面でも配送面でもコストのかかる夕刊の廃止は必然的な流れといえ、遅きに失した感さえある。
     読売新聞は「夕刊を発行していくし、値上げもしない」と強調しているが、朝日新聞の社内では「28年にもすべての夕刊廃止」とのうわさが飛び交っているという。
     夕刊の存在意義がますます薄れゆく中、夕刊を目にすることがなくなる日は遠くないかもしれない。
    毎日新聞中部本社発行の最後の夕刊(2023年3月31日付)紙面
    朝日新聞名古屋本社が2023年4月5日付で「夕刊休刊を告知した朝刊紙面



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