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    アーカイブ 西日本新聞社編 書評 2020/11/01 豊田 滋通
    『現場~記者たちの九州戦後史』(西日本新聞社編)を出版
     2020年11月、九州のブロック紙・西日本新聞のOB47人が『現場~記者たちの戦後史』(西日本新聞社編=表紙写真)という本を出版した。主に高度成長期からバブル期を駆け抜けてきた「団塊」や「ポスト団塊」世代の記者たちが、自らが取材を体験した大事件や事故、災害報道などの現場の様子を振り返った著作である。内容は、「戦後の占領下の取材活動」に始まり、「三池争議と炭鉱事故」「日航機よど号ハイジャック事件」「エンプラ(米空母エンタープライズ)闘争」「カネミ油症事件」「水俣病」「ハンセン病」など、九州のできごとを中心に52項目に及んでいる。
     新聞社のOBたちが刊行委員会を組織し、1943年入社の大ベテランから96年入社の「若手」女性記者までが半世紀に及ぶ世代を超えてこのような本を出版したケースは、国内の新聞ではあまり例がないかも知れない。その狙いと記者たちそれぞれの思いは、巻末の「あとがき」に凝縮されている。
     新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行する中での出版となった。真偽織り交ぜてさまざまな情報が飛び交い、時代はますます混沌としている。私たちは、いたずらに惑わされず、「正しく恐れ」ながら、コロナと共存する新しい日常を模索していかなければならない。学び得た教訓を真摯に生かせば、きっと活路は見いだせるはずだ。メディアの役割は大きい。
     本書を執筆した記者たちも、激動する時代の変遷を見据えながら、人間の愚かさや、たくましさを肌で感じとってきた。ただ過去の事象をなぞるのではなく、その深層をえぐり、未来へのメッセージとして記者一人一人の思いが込められている。
     この本の執筆者の大半は既に現役を退き、それぞれの老後を送っている。しかし、閉塞感が充満する社会、不条理が幅をきかせる世の中に、一人の「ペンを持つ市民」として今こそ自分の取材経験の中から何かを書き残しておかねばならないという元記者たちの切実な思いが、行間から伝わってくる。その意味で本書は、過去の「特ダネ」を集めた本や「戦後回顧録」などとは一線を画すものといえよう。
     筆者はこの本で、長崎総局の勤務経験をもとに、西日本新聞社の原爆報道の戦後史について書いた。その経緯については、本文をご覧いただきたい。この本が世に出たのは、ロシアによるウクライナ侵攻(2022年2月)の1年以上前だが、いまや核の脅威がより具体的かつ切実なものとして世界を蔽い始めていることを痛感する。原発を「人質」にされ、核兵器使用の恫喝にさらされるウクライナの現実を見れば、「原爆報道」とは決して過去の惨禍として記録されるだけのものではないことを、あらためて思い知らされたともいえよう。メディアにとって、就中、ヒロシマ・ナガサキにおける「二重被爆」を体験した唯一の地方紙にとって、原爆報道とは「核無き世界」の実現に向けて半永久的に続く終わりなきキャンペーンでもある。



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