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客員研究員・山川 鉄郎 アーカイブ フジサンケイ広報フォーラム エッセイ 2024/04/10
数少ない趣味がテレビドラマである。登場人物の科白のやり取りを楽しむドラマが好みだ。「VIVANT」もいいのだが、「いちばんすきな花」とか「さよならマエストロ」とかを繰り返し見て、ドラマの世界に浸りたいタイプだ。
「いちばん好きな花」の脚本家生方美久さんは現在、好みの脚本家。登場人物の心情を科白のキャッチボールで楽しませてくれる。生方さんは看護師から脚本家になった方で、尊敬する脚本家の一人として、やはり元看護師の故信本敬子さんの名を挙げている。実は信本さん脚本のドラマ「白線流し」が好きで、ロケ地である松本市を何回も訪れた。いわゆる「聖地巡り」で、ドラマの世界に浸るにはこれが一番である。
迷惑行為は困るが、ロケ地は有力な観光資源だ。例えば「北の国から」で知られる北海道富良野市。市内のあちこちにドラマのロケ地があり、私も何度も訪れている。ちなみに宿泊先は2005年のドラマ「優しい時間」以降新富良野プリンスホテルにしている。理由はホテルの敷地に建つ一軒家の喫茶店「森の時計」を訪れるため。「優しい時間」で寺尾 聰扮するマスターが客にカウンターでコーヒーミルを引かせる静かな喫茶店として登場した。とはいえ観光客も多い。普段は静かな喫茶店とはいいにくく、ドラマのように静かにカウンターでミルを引くのは至難の業。そこで、ホテルに泊まって閉店間際を狙って訪れる。カウンターに座って、静かにドラマの世界に浸ることができる。至福の時である。
ロケ地は貴重な観光資源なのだが、コンテンツが次第に古くなっていくことは避けられない。富良野の「北の国から資料館」は閉館。「北の国から」の最終話が放映されたのは2002年で、閉館も無理はない。アニメもあるが、地方にとっては視覚的にわかりやすい、地元密着のドラマが欲しいところだ。最近予算が厳しく、地方ロケはハードルが高いことは承知しているが、ぜひ魅力あるドラマを作ってもらいたい。
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